第2章 調査兵団宿舎にて【R18】
やっとの思いで描き終えた一枚を取り上げて兵長は言う。
「…悪くねぇ」
またそれか。
ツンデレか。
いや、クーデレ?
そんなどうでもいい事に頭を巡らせていると今度は突然胸ぐらを掴まれた。
『ひ…っ何するんですか』
「お前巨人を見た事はあるか」
『…はい?』
兵長の口をついて出た言葉にキョトンとする私。射抜くような視線がじっと見つめている。
まるで、心の中を探られているようだ。
「分かった。もういい」
そう言って兵長は私を解放した。
一体何が分かったのかは知らないけど。
「オルオ、出立の準備をしろ。この女をエルヴィンの所へ連れて行く」
「ふぇ⁉︎ ほっ…本気ですか兵長‼︎」
驚くオルオだったが半端なく怖い顔で自分を睨む兵長を見て「仰せの通りに!」と敬礼していた。
『(エルヴィン…?)』
私は新たに耳に入った人名に首を傾げる。小柄な兵長に首根っこを掴まれながら。
『ちょっ…あの、引き摺られなくても歩けますから…!』
「黙れ糞豚野郎」
『女の子に対してそれは無いんじゃ』
「だ ま れ」
『…はい』
この時の私は知る由もなかった。
此処から始まる新たな人生が、愛と悲しみに満ちている事を。
何も、知らなかったんだ。
第二章[調査兵団宿舎にて]完