第12章 初めて知る恐怖
「御無礼を承知で申し上げます!ハンジ分隊長!本日の夜、教官を我々新兵に貸して頂けませんか?」
え?
私が言うよりも早く分隊長が口を開く。
「んん〜?新兵、それは何ゆえの願い出なんだい」
「はっ!美人の教官と酒が飲みたいからであります‼︎」
元気よく不可解な発言をするライナー。
間違いなく怒られるだろうと分隊長に目をやったが、その口元はにんまりと笑みを浮かべている。
「よく素直に言ったな新兵よ!その勇気に敬意を表し一晩の貸し出しを許可する!」
但し酒は駄目だ、私がリヴァイに殺されるからね。分隊長は鼻の頭を掻きながらそう言った。
ライナー達はこれまた元気一杯に敬礼をして分隊長を見送っている。
「……さて」
焦げ茶色のポニーテールが見えなくなった辺りでライナーが切り出した。
「先生、今晩は楽しくやろうぜ」
「同期で集まって納涼会するんだ」
ベルトルトはライナーに続いて笑みを見せた。その笑顔を見ていると不思議と温かい気持ちになる。
『(納涼会か…)』
なんだか楽しそうだな。
そんな呑気な事を考えながら、私は新兵達の待つ通常兵舎へと歩み出すのであった。
第12章[初めて知る恐怖]完