第10章 は?もう俺はお前だけのツンデレじゃねーから……。
ヘイヤは無言のまま歩き続け、とある部屋の前で止まった。
「ここがハンスの私室だ」
それだけ言うと、また元の道を引き返して行く。
カインは慌ててヘイヤを呼び止めた。
「おい!」
「なんだ?まだ何か用があるのか」
ヘイヤは、眼鏡に手を掛けながら返事をした。
「あ、いや……悪かったな、送ってくれてありがと」
カインがあまりにもすんなりと礼を言ったからか、ヘイヤは少し目を丸くして驚いている様だった。
「いや、気にしなくていい。」
それだけ言うと、今度は振り返る事なく去っていった。
「うーん、あいつやっぱりいい奴なのかもな」
そんな独り言を零しながら、扉の前に立つ。
(ここまで来たはいいけど、会ったら第一声何て言ったらいいんだ)
結局何も考えられなかった為、カインは暫く扉の前に立ち尽くしていた。