第5章 過去………
→様子を見る。
逃げたいという衝動を抑える2人。香李は、恐怖を感じ過ぎているのか、両足がガクガクと震えていたのだ。蓮は、その様子を横目で見てさり気なく、彼女の前に立つ。
「れ、蓮…ッ!?」
「いいから、其処にいろ。そんな状態じゃ…いざという時に、逃げられねぇしよ……。」
流石の香李は、とても驚いていたのだ。彼は、呆れた表情をして彼女に向かって言うが、肝心な彼も少し顔が強張っていた。足音の正体が分からないと、不安でしょうがないみたいだった。カツンカツン…という足音は、徐々に大きくなっていく。近付いてきているという証拠だった。
「っ……来るぞ。」
蓮は、身構える。それと同時に、足音の正体を見たとき、2人は見開いた。そう、驚いていたのだ。無理もない話だ。足音の正体とは………稟だったからだ。
「り、稟ッ!!!」
香李は、安心した表情を浮かべて稟に近付こうとすると、蓮は待てよ!と言って香李が稟の所に行く事を阻止する。勿論、香李本人は、とても驚いていた。
「ちょっ?!れ、蓮!何を…?」
「…………お前…あの稟か?」
睨みつけるような鋭い瞳で、蓮は稟に問い掛ける。稟は、ニコリと笑い言った。
「ソウダヨ???ソレガ、ドウシタノ???」
「ちげぇな。いつもの…稟とは違うな。」
蓮は、稟の言葉にすぐ否定する。目の前にいるのは、確かに稟だった。しかし、言葉や微笑み方がいつもとは違うという異変に気がつく香李。そして、稟は鋭い包丁を2人に見せつける。
「稟、なんでそんな物を持ってるの!?」
「持ッテテモ、イイジャン。ダッテ…コレハ──」
「俺達を殺すためか?」