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イナクナッテシマエバイイ…

第5章 過去………


→逃げる。

お互いに、足音の正体が気になっても恐怖感が大きかった。そして、蓮は一歩後ろに下がり、逃げる体勢をとる。


「走るぞッ!!」

「えっ!?」


蓮は、香李の左腕を掴み急に走り出す。香李は、彼の行動に戸惑って少しよろけそうになるが、なんとか走る。蓮は、なんとか距離を置こうと考えたのだ。しかし、足音が聞こえる限り、歩くペースは全く同じだった。幸いにも、かなり距離が離れた為、足音が全く聞こえなくなった所で、止まる。


「れ、蓮………。いきなり走らないでくれ………る?」

「あ、わりぃ。つい…。」


香李は、大きく呼吸をしているため、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。その様子から蓮も謝るしかなかった。そして、香李は呼吸が落ち着いたのか、ゆっくりと顔を上げ蓮を見ると…。急に彼女の顔色が変わった。


「ん?どうした?」

「……あ…………。れ、蓮ッ!危ないッ!!!!」


蓮が首を傾げた同時に、香李は彼を強く押す。やがて、彼の体は大きく傾く。一瞬何があったのか理解するのに時間が掛かった。そして、彼女からうぅ…と言う唸り声が蓮の耳に入る。


「か…………香李…………。お、前………。」


鋭い包丁は、彼女の胸へと刺さっていた。そう、彼女を刺したのは…あの少女だった。包丁を抜かれて、力無く地面に倒れる香李。彼女の瞳は、蓮を捉える。


「………れ…………ん…。に、げて……………。」


香李は、彼に一生懸命伝えると彼女の瞳から光が消え、息絶えた。彼の瞳には、未だ信じられないのか、目を見開いていた。


「う、そ……だろ?……なぁ…返事を……返事をしろッ!!!!!!!」


蓮は、彼女の亡骸に向かって大声で問いかける。
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