第1章 久しぶりの…………。
─優稀─
僕は、無言で蓮の様子を見る。何処か鋭い瞳で、蓮は村を見ていた。僅かに、蓮の口が動く。
「……あん時よりも…雰囲気が………。……いや、酷くなっているみてぇだな………。」
蓮の言葉に、疑問を持つ。蓮は、随分と小さな声で言っていた為、よく聞かないと聞こえなかった。
鈴欄や香李は、蓮が何て言ったかわからず、首を傾げる。僕は、蓮に近づいて2人に聞こえない声で、言った。
「………蓮、どうかしたのか?まるで───」
「俺は、何も知らねぇよ。───ただ………。」
僕の言葉を被せるように、急に喋り出す蓮。そして、またいきなり黙り込む。僕は、ただ単に、蓮が心配だった。
いつもの蓮ではなかったからだ。蓮は、俺の顔を見て、いつも通りに眼鏡をクイっと持ち上げて言った。
「俺の事心配ってか?俺の事よりも、お前は、自分や大切な奴を心配しろよ。早死にするぜ?お前と違って、俺は死なねぇよ。」
蓮は、ニヤリと笑い僕に向かって言った。その様子だと心配する必要はなかった。僕は、クスと笑い…そうだね、と答える。
蓮の自信は、何処から来るのかは、僕にはわからないが、だけどこれだけは言える。
……蓮は、死なないと……。
─優稀 終わり─