第5章 過去………
─優稀─
そう僕は、小さい頃から香李が好きだった。誰に対しても、明るく接してくれる。僕は、彼女の笑顔が一番好きなんだ。小さいの頃の僕は、単なる香李の事が好きだった。しかし、中学に上がってから彼女を1人の女の子として、好きになっていた。一緒にいる時が、一番嬉しかった。とても暖かった。だから、何が何でも彼女の味方でいよう…彼女を守ろうと心に誓ったんだ。
──でも、今の僕は無力だ。
そう思うしかなかった。このままだと、鈴蘭の手で香李を殺すだろう、と考えると冷や汗が止まらない。
「鈴蘭……君は……。本当の目的は何?……僕を閉じ込めること?それとも………香李や蓮を殺すことなのか?」
此処には、鈴蘭はいない。だから僕の言葉は、空気となり消えていく。此処から逃げ出して、香李や蓮を救いたいとは思っているのにも関わらず、鎖という呪縛から逃げられない。僕は、ひたすら鎖を引っ張る。ガシャンガシャン!と鎖の音が、響き渡る。これを聞いた鈴蘭は、恐らく此処に様子を見に来るだろう。そして、僕は……殺されるだろう。恐怖が僕に襲い掛かる。
──僕は、絶対に諦めない。香李を助けるんだ!!
ひたすら僕は、鎖を引っ張り続けるのだった。
─優稀 終わり─