第5章 過去………
蓮の一言に、おかしいな…と声を漏らす香李。確かにおかしな話だ。香李の友人から聞いたのは、行方不明が続出した為だったが、逆に蓮はそんな話を聞かされていない………。いや、知らないのだ。何故かというと、此処の村の出身者だからだ。行方不明が出たというのを、必ず耳にするはずだ。だから、おかしいのだ。ということは……。
「………もしかしたら、俺が引っ越してすぐか、暫くしてから起こったことか…その辺だな………。」
「……それに、その中の何人か死体が見つかってないんだって………。」
「マジか……。」
蓮と香李は、難しい表情を浮かべたままお互いの顔を見る。やがて、考えても仕方ないということで、再び歩き始めるのだった。香李は、蓮の後ろからついて行く形で歩いている。彼女は、黙ったまま蓮の背中を見つめていた。
──蓮、貴方にまだ話していないの。この村のこと…。だけど、今言う自信がないの…。だから、ちょっと待ってて。覚悟が出来たら必ず伝えるから……。
彼女は、1人で心の中でそう呟いていた。