第5章 過去………
一方で、鎖に繋がれている優稀は、溜息をするのだった。何時間こうしていればいいだろうか…と思っている優稀。そして、カツンカツン…という足音が聞こえてくる。そして、牢屋の前に立つ。
「気分ハ…ドウカナ?」
「さぁ、どうだろうね……。気持ちが沈んでいく感じだよ……。自由になりたいものだ。」
優稀の言葉に、笑顔が消える稟。その異変に気が付いた優稀は、息を呑み込む。彼の脳裏では、何かマズい事でも言ったのではないかと思っていたのだ。稟は、鉄製で出来た檻をガシッ!と掴み優稀を見る。その時、優稀の体は、ビクッ…と跳ね上がるのだ。
「ネェ、優稀…私以外ノモノガ無いト駄目ナノ??私ダケイレバ、十分ジャナイノ…………??」
「…っ……。鈴蘭……………君は………。」
言葉を失う優稀。やがて、ゆっくりと檻から離れていく稟。そして、ニコリと微笑むがそれは不気味な微笑み方だった。優稀は、目を見開き彼女を凝視する。クスクスと笑い言った。
「アノネ………此処ノ地下ニ、香李ト蓮ガ入ッテ来タノ。」
「………え……?」
彼女の言葉に、目を丸くさせ驚いている優稀。そして、彼女の笑みが消えやがて冷たい瞳に変え、優稀を見下す。彼女の口が僅かに、動くと優稀の顔色が一気に変わる。それも、真っ青に………。稟は、クス…と笑い檻から離れて行った。
「ま、待ってよ!!」
優稀は、稟を追いかけようとしたが、ガシンッ!と鎖が音を立てる。追いかけたくても追いかけられない。優稀は、唇を噛み締める。彼女が言った言葉とは………。
「邪魔ダカラ……消シテクルネ……。」
その一言が、恐怖だった。