第5章 過去………
ひたすら、歩いていると一つの扉を発見する香李と蓮。お互いの顔を見て、ゆっくりとその扉を開ける。開けた瞬間、2人は口や鼻を咄嗟に抑え込む。
「っ………。」
「チッ……、此処の方がひでぇや。」
その理由は、先程地下室に入ってきた時の臭いと比べものにもならないほどの、鉄の臭い……。つまり、血の臭いが酷かった。それも、密封という事なのか臭いが充満していた。2人は、ゆっくりとその部屋に入って行く。此処にも、拷問道具でいっぱいだった。その拷問道具に、大量の血がベットリと付いている。だが、真っ赤というか、黒くなっていた。
「此処も、だいぶ時間が経っているみてぇだな。マジで、此処…胸くそ悪い……。」
「此処で、一体何をしてたの………?」
香李が蓮に質問するが、彼にも分からないという事で、首を左右に振る。鎖もあれば、鉄で出来たベッドなどが置いてあった。
「いくら、此処の出身者でも…こんなの聞いてねぇよ。いや……知らなかったというべきか…。」
彼は、悔しそうな表情をしていた。その表情を見た彼女は、黙る事しか出来なかった。蓮は、ベッドに向かって歩き、ガツンッ!と蹴る。蹴った所で、何も起こらない。というか、ベッド自体も動かなかった。余程、頑丈に出来ているみたいだった。
「ぜってぇ、帰ったら…母さんや父さんに問い詰めてやる………!!」
蓮の瞳は、怒りで満ちていた。香李は、その瞳を見て息を呑み込む。
──こんな蓮……初めてみた。
香李は、ずっとそんな風に思っていた。やがて、蓮はふぅ~…と息を吐いて、眼鏡をクイッ…と持ち上げる。やっと、落ち着いたみたいだった。