第4章 クルイ
─稟─
私は、優稀と別れた後、香李と蓮がこの地下に入って来ることに気が付き、様子を見ていた。あの少女と出会った二人は、その場で立ち竦んでいた為、私は包丁を握り締め待機する。もしかしたら、二人は此処で別れるのではないかと、予想していたからだ。別れた後で、一人になったところを、殺せばいいと考えていた。
「………私ト優稀ノ間ニ立ツ者ハ……誰デアロウト………許サナイ……。」
私の声は、怒りに混じっていて一人で呟いていた。そうだ、誰にも渡してはならない。
………私ト優稀ハ、イツマデモ一緒ナンダカラ…。
もう、私を止める者はいない。いたとしても、殺せばいいだけの話。だが、私の予想は外れていた。その場で別れると思いきや、二人で逃げる事になったのだ。流石に、それでは殺せない。いくら刃物を持っていようと、二人同時には殺せない。少女は、二人を追いかけていく。私は、慌てて身を隠す。二人が通り過ぎた所を、確認して出る。
「チッ………アト、少シダッタノニナ~…。残念…。」
私は、包丁をしまおうとすると、手に鋭い痛みが走る。よくよく見ると、其処から流れ出す自分の血。私は、口を僅かに吊り上げて一人事のように呟く。
「優稀ノ血ハ………キット、綺麗ダロウナ………。」
私は、その場から離れるように歩いたのだった。
─稟 終わり─