• テキストサイズ

イナクナッテシマエバイイ…

第4章 クルイ


─優稀─

此処に何時間閉じこめられているのだろう……。周りが暗いせいなのか、又は時計がないせいなのか、時間の感覚が全く分からない。やはり、鎖が頑丈な為、全然切れてくれない。僕は、大きな溜息をつく。


「どうしよう……本当に………。」


トコトコと歩いてくる音が、僕の耳に入ってくる。大抵決まっていることだ。鈴欄だ。僕の入っている牢屋の前で、足を止める。そして、檻に手をかける。


「ドウシタノ?優稀?」


微笑んで僕に言ってくる鈴欄。しかし、彼女の微笑みはどうも不気味だ。そんな笑みを見た僕は、息を呑み込む。言い方を一つでも間違えたら、殺されそうだと感じているからだ。


「………何でも…ないよ……。」


僕は、弱々しく言うと彼女は、そう…と答えるのだ。その時の表情は、何処か寂しそうに見えた。だけど、それを気のせいだと僕は信じたいと思っていた。鈴欄は、檻から手を離して何処か遠くの方へと目線を向けるのだった。


「……香李達ガ、来チャッタ…。」

「え……?」


僕は、香李達という言葉に慌てて顔をあげる。此処からだと、来たというのは確認出来ない。それに、まだ物音もしていない。じゃあ…どうやって鈴欄は分かったのか、僕には分からない。すると、鈴欄は…追い返さないと…と呟くように言って僕の牢屋から離れて行った。


「……っ……。どうか…香李に蓮………。無事でいてくれ……。」


今の僕は、無力だ。ただ歯を食いしばるだけしか出来なかった。そして、何よりも2人が無事でいられるように、祈ることしか出来なかった。




─優稀 終わり─
/ 94ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp