第2章 1人は……ダメ……
暫く、蓮は頭を抱えていたがやっと、ゆっくりと立ち上がる。蓮の頬から流れ出す大量の汗。
その様子を見て、本当の蓮だと分かった香李は、彼に近づこうと歩き出すが………。
「それ以上、俺に近づくんじゃねぇよ。」
「っ!?」
蓮の声に、足を止める香李。蓮は、袖で自分の汗を拭う。そして、大きな溜息をして香李を見る。
「はぁ…。んだよ、今のは…。………香李、俺は一人で行動する。ついでに優稀を探してくる。お前は、稟を見つけて、駅に集合な。」
彼は、彼女の返事を聞かずにその場から離れる。香李は、その場から動かなかった。いや、動けなかったのだ。
いきなり、蓮の態度がいつも通りになったが、先程起きた状況に頭の整理がついていけなかった。
「ねぇ……蓮………。さっきの何?まるで、別人だったよ……。」
香李は、掠れる声でそう呟いていた。しかし、呟いていた所で蓮には聞こえない。届かない。
香李は、その場でヘナヘナと力無く座り込む。彼女の頬には、涙が流れ始める。誰もいない所で、寂しく一人で泣く。
「優稀……優稀………会いたいよ………。」
彼の名を呼んでもその場に現れない。それは、香李でも分かっていたことだ。彼女は、その場で暫く泣いていたが、やっと落ち着いたのか、その場から立ち上がる。
「探そう………稟を。」
香李は、稟を探すために蓮とは違う方向に向かって歩き出す。