第2章 1人は……ダメ……
香李は、旅館から抜け出してひたすら村の中を走る。かなり息が上がって、やっと足が止まる。
其処で、呼吸を整える。その時、後ろの方から、ガザッ!と足音が聞こえてきて、香李は息を呑み込みゆっくりと振り向く。
「なんだ、お前か……」
其処には、優稀ではなく蓮がいた。香李は、蓮だとわかりゆっくりと息を吐く。そして、少し深呼吸をする。
「蓮……。稟は?」
「ん?あぁ…アイツか。さっき見つけたのに、また居なくなっちまった。」
蓮は、少々呆れた表情をしながら言った。また?と香李は思わず、蓮に問いかける。蓮は、あぁ。と頷くのであった。
香李は、蓮の襟を強く掴み涙目になりながら訴える。
「れ、蓮…お願い!優稀を助けてッ!」
「はっ!?お、お前………。」
蓮の表情が一気に変わる。顔を真っ青になる。蓮は、一度目を伏せる。香李から僅かに伝わる震える手で、蓮の襟をずっと掴む。
蓮は、はぁ…と大きく息を吐き出して、眼鏡をクイッと持ち上げる。
「わかった……。だから、放してくれ。先に、優稀の方からか………。んで、場所は何処だよ?」
「ご、ごめんね。そして、ありがとう!場所は、旅館だよ……。」
ぱぁっ!と手を放して、さっきよりも高い声で、話す香李。蓮は、旅館か…と呟き歩き出す。
香李もその後を追いかけようとすると、痛ッ!と声を張り上げる。何事かと思った蓮は、振り返り香李を見る。
香李は、右足首を押さえていた。蓮は、挫いたのか?と聞きながら、香李の前に膝を地面につけて、蓮は彼女の足首を見る。
そこから流れ出す血が、見えた。