第2章 1人は……ダメ……
無事、香李をあの少女から引き剥がす事に成功した優稀。恐怖を打ち消すように、首を左右に振る。
少女は、包丁を握り締め優稀を見る。少女は、香李を追いかけて行かないことに、安心するのだった。
しかし、此処はあまりにも危険な場所だ。優稀は、息を呑み込み数歩後ろに下がる。少女は、ゆっくりと徐々に優稀に向かって、歩く。
「……君は……一体………。」
優稀は、少女に向かって質問をする。少女の表情は、はっきりと見えない。長い前髪で顔が、はっきりと見えないのだ。
「…………ヤット………ミツケタ………。」
優稀の質問とは、違う答えが返ってくる。しかし、顔が見えなくともとてつもない不気味な笑みを浮かべた。
優稀の体は、冷や汗を掻く。此処に、留まっては危険だ、と優稀の脳は、そう信号をだす。
優稀は、奥歯を噛み締め近くにあった物を少女に向かって投げる。ガンッ!と激しい音を立てて、少女の体は少し傾く。
その隙に、優稀は少女の横を通る。ひたすら廊下を走る。そして、ある一定あの部屋から離れた所で、足を止めて息を整える。
無我夢中で、走ったせいか今何処に居るか
優稀には検討もつかなかった。何よりも香李が今何処にいるのかもわからない。
手掛かり一切ない状態。優稀は、今旅館の2階にいる。
(……香李…今、君は何処にいるんだ?)
自分の事よりも幼馴染みである、香李の心配をする。優稀の不安は尽きない。ゆっくりと歩き始める。
そして、ある部屋に入る。その部屋に入って優稀は目を見開く。何よりも言葉を失う。その部屋にあったのは、壁一面に……。
『愛してる愛してる愛してるアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテル。』
という赤い文字で、書かれていた。それと同時に、優稀の後ろからドガッ!と鈍い音が、聞こえて優稀の意識を失った。