第1章 久しぶりの…………。
ガタン!と大きな音が、香李の耳に入るが振り向く事が出来ない。それだけ香李は、恐怖に怯えていた。
「香李ッ!!」
彼女の名を呼び、近づく。そして、そのまま震える香李の体を自分に抱き寄せる。香李は、目を丸くさせる。
「…え……。優稀?」
香李は、彼の名前を呼ぶ。優稀は、ゆっくりと頷き彼女の背中を撫でる。彼女を安心させるためにも………。
それに気が付いたのか、香李は更に涙を流す。優稀は、黙って香李が泣き止むのを待っていた。
「あ~あ。気まずいな……。俺が、稟を探してくる。じゃあな、優稀。」
「お、おい!蓮!?」
優稀は、慌てて彼を呼び戻そうとするが、蓮はそれを気にせず、古い家を出て行った。優稀は、深い溜息をして諦めた表情をする。
「………ごめん………。優稀……迷惑をかけて……。」
香李は、震える声で優稀に謝罪をする。優稀は、首を左右に振り彼女の頭を優しく撫でる。
香李は、優稀と共にゆっくりと立ち上げる。優稀は、香李にあまり見せないように、彼の背中に移動させる。
「とりあえず、この家から出ようか。」
「う、うん……。そうだね……。」
香李は、戸惑いながらも頷く。すると、優稀は彼女に左手を差し述べた。突然の出来事に、香李の頭には?という文字が浮かんだ。
「手、繋ごうか。そうしたら、怖くないだろ?」
照れくさそうな表情をしながら、優稀は香李に言った。香李は、ニコリと笑い右手で、彼の左手を握る。