第14章 わたしには無理
「おじゃまします…」
「誰もいないよ」
彼の部屋に行く。
「………」
ヤバイ。私が話したいって言ったのに何を話したらいいかわからない!
「…僕のこと嫌いになってないの?」
彼が先に口を開く。
「…ならないよ!」
私が答える。彼が質問を続ける。
「殺されかけたのに?」
「……」
私はちょっと返答に困って黙ってしまう。
「本気だったと思ってないの?」
彼が質問を重ねる。私は口を開く。
「そのときは本気だと思ったけど…後に言われたことの方がインパクト強くて…」
「…何か言ったっけ」
彼が首を傾げる。
「だから!嫌いになっていいよって!」
私は自分の手をぎゅっと握る。
「あぁ…それか」
彼がほんのちょっとだけ優しく微笑む。
私は話し始める。
「わたし…逢坂くんが!逢坂くんが…嫌いになっていいよとか…わたしに!わたしに言うなんて…」
うぅヤバイ…泣きそうになってきた…ガマン…。
「そんなお人好しで…ゆめちゃん。殺されちゃうよ…僕に」
彼はちょっと目を伏せる。
私は泣かないように息を吸い込む。そして答える。
「いいよ」
彼が視線を上げて私を見る。
「わたし…逢坂くんに殺されたら…逢坂くんは一生わたしのこと忘れないでしょ…」
私の目にだいぶ涙がにじんでくる。
「嫌いになっていいなんて言われるぐらいなら…殺したいって言われる方がずっといい。
わたしは逢坂くんがどうしたいかが知りたいの。
逃げないで…わたしから…目をそらさないで」
続けてしゃべるために私はもう一度息を吸い込む。
「逢坂くんは…小説家とかになりたい人だから…普通じゃなくていい。
生活のことも心配しなくていい。私が養ってあげる。
繊細すぎても…弱くても…私が守ってあげる……一生!」
後半だいぶ涙があふれ出てきた。
「ありがとう…」
彼は言った。
そして私を優しく抱きしめてよしよしした。
私は彼の胸で号泣した。
言ってることとやってることが完全に逆だ…。