第1章 ひどい!
もう逢坂くんと付き合って1年かぁ。
いつから交際が始まったことになるかな。
私が初めて彼を認識して一緒に登下校するようになった日?
小説の参考にって頼まれて初めてデートした日?
私が泣きながら告白してキス…+αした日かな?
まあだいたい5月ってことでいいかな。
だから…もう1年!
私は彼のことをどんどん好きになって、今ももちろんすごく大好き。
彼は私のことずっと前から大好きって言ってくれて、すごく優しくて、すごく大事にしてくれる。今もずっと。
私たちは3年生になり受験生なので、前みたいに頻繁に家を行き来したりデートしたりはしなくなったけど、登下校はやっぱり毎日一緒。
「逢坂くんおはよう」
「おはよう」
私がいつもの公園でにっこり笑って声をかけると、彼もちょっと微笑んで読んでいた本をしまう。
「5月だね!」
私は彼の顔を覗き込んで言う。
「ん?ああそうだね。5月だね」
カバンを閉じながら彼はそう返事した。
意外と記念日とか気にしない方なのかな?
いや、聞き方が悪かったな。ふわっとしすぎてて。
「逢坂くんって意外と記念日とか気にしないほう?」
遠回しに聞くのは得意じゃないのでストレートに聞いてみた。
彼は真顔で返事する。
「え…もちろんすべて把握してるけど?多分ひくぐらい」
「そ、そうなんだ」
じゃあもう言ってしまおう。
「私たち付き合って1年になるね」
私がそう言うと彼は不思議そうな顔をした。
「え?そうなの?」
え、そうなのって…。
「えええ…すべて把握してるんじゃないの…」
私はちょっとがっかりする。
彼は真顔で話を続ける。
「いや…細分化しすぎて大局が見えてなかったというか…。そもそも交際が始まったっていつから数える?初めてsexした日?」
……。
「うわーん!ひどいー!」
私は半泣きでその場を走り去った。
「あっ!待って!」
逢坂くんの声が後ろから聞こえた。