第1章 【目に付いた話】
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毎日、毎月、毎年、そして向こう何年も…
勉学に勤しみ、交友を交わし、
一家団欒の末に幸せな夢をみる──。
世間様では当たり前の平穏が、僕らにとっては当たり前じゃなくて。
まるで、幸せになることは許されないのだ、と言わんばかりに幸福感の後にやってくる絶望感。
この世界を作ったのが【神】だとして、僕の人生を筋立てたのも【神】だとすれば、僕はとことん【神】に嫌われているらしい。
逆に出来が悪過ぎて、脚本にダメ出しをしてやりたいくらいだ。
「…ホント、悪趣味な話だよ」
口から漏れた苦笑に反して、どうにも出来ない無力な自分に涙が零れる。
家では泣けない。
家族の前で泣いたら、心配をかけてしまう。
僕は独りで戦うと決めたのだ。
─大好きだった姉ちゃんの代わりに、家族を守るのだと─
だから僕は涙を枯らしてから、今日も笑うのだった。
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