第1章 足の不自由な2人
ある日。すでに月が輝いている頃。
「しっかしリヴァイが怪我しちゃうとわね〜。しかも捻挫って。あんなにすごい音がしたのに普段どんな鍛え方してるんだか。」
女性の間延びした声が響く。
「チッ。誰かとは普段から鍛え方が違うからな。こんなもん唾つけときゃ治るだろ。」
眉間に皺を寄せながら発せられる低音にハンジは、
「リヴァイなら巨人に喰われても汚ねえとか言って腹から出て来そうだね。」
と、笑っていた。
ここは医務室。
今日調査兵団が調査から帰還していたため、室内は消毒液の匂いが漂い、混み合っている。
ソファに座るリヴァイは今回の調査時、部下を庇ったときに足に痛みを感じたため、ここを訪れていた。
訪れたといってもハンジに痛みを悟られ、無理やりにだったが。
「しかしリヴァイが動けないとなると大きな痛手だな。」
リヴァイが治療されている間にハンジから報告を受けていたエルヴィンは、溜息をつき、近くにあった椅子に座った。
「…悪ぃな。だがたかが捻挫だ。すぐ治る。」
珍しくリヴァイから謝罪のことばを聞き、エルヴィンは頬を緩める。
「いや。久しぶりの休暇と思えばいいさ。君に会わせたい人もいるしな。」
エルヴィンの楽しそうな笑みに、リヴァイは呆然としていた。