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遠い花

第2章 水


江ちゃんが練習メニューを伝えると皆それぞれに練習を始めた。
「百合ちゃんは競泳のことどのくらい知ってる?」
「えっと、泳法が四つあって、メドレーがあるんでしたっけ…?」
オリンピックの時にアナウンサーがそんな説明をしていたような気がする。
「うん、そんな感じだよ。泳法はフリー、バック、ブレ、バッタの四つ。バックは背泳ぎ、ブレは平泳ぎ、バッタはバタフライの事で、フリーは言葉の通り自由ってこと。まぁでもクロールを泳ぐ選手が多いかな。分かったかな?」
私がこくりと頷くと、(七瀬さんがすでに泳ぎ始めている)プールの方を向いた。
「皆それぞれに専門があって、ハルはフリー。渚がブレ、怜はバッタなんだ。」
「…橘さんの専門は…」
「俺?俺はバックだよ。」
バックは確か背泳ぎの事だったよね、と橘さんの話しを自分の中で整理しながらなんとなく上を見上げた。
「あ…」
「どうかした?」
「晴れてたら綺麗な空が見れますね」
「…‼︎」
私が笑いかけると橘さんが驚いた顔を見せた。
あれ…私おかしいこと言ったかな…⁉︎
「あの……?」
「…そっか。百合ちゃんもそう思うんだね。」
「えっ…?」
「背泳ぎはすごく綺麗な空が見えるよ。怖い事なんてなくなるくらい、綺麗な。」
今までもずっと優しい笑顔だった橘さんだけど、私が出会ってからの間にみたどの笑顔より優しくて、少しさみしそうな笑顔だった。
「真琴先輩、ちょっと良いですか?」
「あ、うん!ちょっと話しすぎちゃったかな。じゃあ練習始めるから、楽しんでもらえたらいいな。」
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