第13章 抑えられない情動
「それに、呼び出した時は、
匂いを嗅ぐつもりなんかなかった。」
「でも最初から、かなり至近距離で
見てましたよね……?」
「仕方ないだろ。
やっぱり匂いが気になったんだ。」
何だその言い分は。
そんなに偉そうに言う事でも
ないだろうに……
ミケの真摯な表情を見つめ返す。
「エルヴィンを嬉しそうに見つめるお前を、
遠くから見ているだけで満足していたが、
実際にお前の匂いを近くで嗅いだら、
感情が抑えられなくなった。
………もっと近くで、お前を感じたくなった。」
少し困惑したような表情を浮かべる
ミケの頬に、そっと手を添える。
ミケの大きな手は、
包み込むようにその手を握った。