第10章 弾かれたように
「……アンを、傷付けるな。」
「よくお前がそんなことを言えたもんだな。
お前もアンを傷付けた一人じゃないか。
話も聞かず、部屋から追い返したんだろ?」
エルヴィンのため息交じりの声が階段に響く。
「そうだ。
だが、こうなることを望んで
追い返した訳じゃない。」
何故か少し声が震える。
困惑のせいなのか怒りのせいなのか、
それすら判断できないが
声の震えを気にしていられる程、
冷静に話せる気がしなかった。
「お前と同じようなもんだ……
好きな女の幸せを後押ししたい。
好きな女には幸せになって欲しい。
その為にアンを突き」
「突き離す前に、
何故それをアンに言わないんだ?
アンはお前と
話をしたがっていたんじゃないのか?」
言葉を遮られ、捲し立てる様に言われて、
口を閉ざした。