第9章 作意の意味
エルヴィンの一番近くで
行動を共にしてきた自分が、
一番分かっていたことだった。
あいつのような強さも、
懐の深さも、思慮深さも、
俺は持ち合わせていない。
そんな俺に、
エルヴィンの替わりが勤まるとは到底思えない。
エルヴィンに替わって
アンを幸せにすることなど、
自分に出来る訳がない。
そのことに、
もっと早く気付くべきだった。
その時、部屋のドアを
控えめにノックする音が聞こえ、
ゆっくり立ち上がる。
それと同時に、
この音を心待ちにすることが
もうできなくなったことを考えると
言葉では言い表せないような
鈍い痛みが身体を奔った。