第8章 否と策
「ミケさん。私です。」
いつもと同じように声を掛けると、
しばらくの沈黙の後、ゆっくり扉が開く。
「調査、お疲れさまでした。」
「ああ。」
ミケはそう言ったきり、口を噤んだ。
いつものように
大きくドアを開くことをしないミケに、
少し違和感を覚える。
「……あの、話したいことがあるんですけど、
部屋に入ってもいいですか?」
「もうお前を
部屋に入れるつもりはない。」
その一言で、一気に身体から
体温がなくなるような感覚に囚われた。
「このままズルズルと身体の関係を
続けるのは良くないだろう。」
「いや、私は話したくて来ただけで」
「俺のことは大丈夫だ。
お前は自分のことだけを考えればいい。」
ミケのその言葉を聞き、
思わず部屋に一歩踏み込む。