第1章 身体の関係より大切な
「何笑ってんだ?」
ミケは緩んだ表情をこちらに向け、
優しく頬を抓まれる。
大きな手が少し頬に触れただけでも、
心なしか気持ちが高揚した。
「いえ、私もしつこくなったんだなぁ
って思っただけです。」
「……お前は元々しつこかっただろうが。」
ミケの予想外の返答に、
目を丸くしていると
「しつこくなきゃ、あんなに一途に
エルヴィンを想えないだろう。」
そう言った声の主の暖かい手が、
頬から遠ざかった。
言われてみれば、エルヴィンに関しては
今までの自分からして考えられない程に
執着していた気がする。
「確かに、一年近く片思いをしたのは
初めてですね。」
そう答えながら、
エルヴィンを想い続けていた時のことを
思い出そうとするが
ミケと関係を持ち始めてからの
エルヴィンとのやりとりしか
思い出せそうにもない。
その前の自分は、エルヴィンを
遠くから密かに見つめることだけに
徹していたことに、
改めて気付かされた。