第7章 “憧れの人”
「エマ?」
「あれ、名前知らないんですか?
クロルバ区の食堂で働いてる女性です。」
そう言った途端、
エルヴィンの目の色が変わったのが
すぐに分かった。
「……言われてみればそうだな。
名前を聞いたことがなかった。」
「名前も知らないのに好きになるって、
なんかロマンチックですね。」
思わずそんな言葉が口をついて出ると、
エルヴィンの頬が少し緩んだ。
「それで、彼女がどうかしたのか?」
「……エマがつい先日、
調査兵団の料理人になる試験を受けたんですが、
その試験会場でナイル師団長直々に、
憲兵団へ引き抜かれたらしくて……」
「ナイルに?!」
珍しく驚嘆した声を出すエルヴィンに驚き、
思わず身体がビクついた。