第1章 身体の関係より大切な
「俺を心配してくれてるのか?」
「当たり前じゃないですか……」
身体全体を包み込むようなミケの抱擁で
心地良い体温が身体を巡る。
勿論、“身体の関係”も必要ではあるが、
ミケの体温を一身に受けることのできる
この時間が、今の自分にとっては
一番大切だった。
少し顔を上げると、
見るからに柔らかそうな顎髭が目に留まる。
そっと触れてみると、
優しい眼差しと感触が、
自分の鼓動を速くさせた。
ゆっくり近付くミケの表情は穏やかで、
調査前だということをまた忘れそうになる。
………いや、それでいい。
今だけは忘れよう。
そう思い直し、ゆっくり目を瞑った。