第1章 妖精の尻尾
仲間の顔がこちらに向き、私の姿をとらえると笑顔で迎える。
おかえり、と。
開いているテーブルに荷物を置くと一息ついた。視線が追いかけてくる。
そう、私は初S級クエストから帰ってきたのだ。
「ヴィナ、お帰り。どうだった?クエスト。」
「ミラ!」
私は自信満々に親指を立て顔一面に笑みをたたえた。
「成功!」
とたんに周りから歓声が起こり、酒だ食べ物だ祝いだとこの期に乗じて騒ぎたてる。やれやれと頭を抱えたけど、正直私も嬉しくて騒ぎたい。
なにせ、S級クエストをたった二日でこなしてきたのだから。
「やったな!ヴィナ!」
「流石だぜ!」
「やると思ったよ!」
「ヴィナ!」
「ただいま。エミア!」
真っ先に飛び込んできた灰色の空飛ぶ猫、エミアを思いっきり抱きしめる。
もみくちゃにされていた私たちはマスターが現れたことによって無事に解放された。マスターも嬉しそうだ。
「よーくやった!これからはフェアリーテイルを率先して導け!」
「はい!…ところで、エルザは?」
そう聞くとミラがゆるゆると首を振りまだ帰ってきていないことを示す。私はそっかと言わんばかりに傍にあったテーブルに腰掛け、エミアも隣で座っていた。
「エルザがどうかしたのか?」
「ちょっと気になる噂を聞いたの。最近微かだけど闇ギルドが動きを見せているらしくて。」
マスターの目が本当かと私に向き、しっかりと頷いた。
旅の途中耳にした噂と、最近の不当な輩との接触。私はそのことを聴き、エルザとチームを組もうという結論に至ったのだ。