第1章 7月7日
降り止まない雨。
静かな夜の街に水音だけがしきりに流れてる。
湿った風が頬を撫でた。
優菜は二階の部屋の窓から空を見上げていた。
時折聞こえる車のタイヤが水を切って跳ねる音で、ずいぶんと雨が道に溜まっているのだと想像させる。
•••どうしてこんなに降るのだろう。
今日は年に一度の七夕なのに•••
おとぎ話と分かっていても、この日になると毎年天気を気にしている自分がいた。
記憶を遡ると、毎年7月7日は雨だ。
もう、何年も。
織姫と彦星は何年も会えてないのだろうか…。
星一つ無い真っ黒な空を見つめて、そんな事をぼんやりと考えていた。
「結構、降ってるな。」
すぐ左から男の人の声がして、優菜は思わず小さな悲鳴を上げた。