第4章 第1層~第10層 その3 "再起"
(今の勢い…いける!)
そう感じた所で一つ、変化が起きた
最早三回目、今更驚くまいと思ったが、変化の過程に私は驚いてしまった
ボスの両腕、その肘辺りが何かで突き破られた
丁度腕くらいの細さのそれは円筒形に伸びている
アレは…何だ?
驚きにより、一瞬全員が止まった
その止まった瞬間にもボスは動く
左腕が部長を狙う
「チッ!!」
大きく舌打ちし、腕の狙いから離れる
左腕は部長の後ろ、私から見て左の家の手前で止まった
またただの打撃かと思ったが、それは違った
左肘から飛び出した円筒形の物体―それが高速で腕の中に入り、掌から飛び出た
それは家に直撃し、大きく円形に家をくりぬく
家近くから腕を離し、円筒形の物体がするすると元の位置に戻っていく
聞いた事がある
火薬やら何やらを炸裂させ、杭の類いの物体を高速で射出し、勢いを使って超近距離の対象を物理的に撃ち抜く兵装
通称―パイルバンカー
つまりあの円筒形の物体は杭の一種と…そういう訳だ
ここに来てボスの火力が一気に上がった事になる
だが、負ける訳にはいかない
(基本の攻撃範囲は変わらない…急な杭だけ気を付ければ…死にはしない!)
ゆらりと私を向くボスと対峙しながら、考えこちらも見つめ返す
腕を視ろ…掌を視ろ…
次はどちらで来るか、見極めようとしていた所、急にボスの顔付近が火を吹いた
何事かと思ったが、答えはすぐに出た
何者かがギミックとして用意されていた戦車を使用したのだ
火を吹くのは一回だけではなく二回、三回と弾丸を当てていく
しかし、私の懸念はそこではなかった
ボスは戦車使用者を優先的に狙う
そのAIが生きているなら、必ず戦車に向かう
案の定、ボスは戦車の方へ浮遊していった
戦車に対してなら確実にパイルバンカーを使う
これは…いけない
「それから出て!!」
聞こえているいないは構わない
私は叫んでいた
誰であれ、死なれるのは御免だ
だから私は必死に叫んでいた