第34章 第61層~第70層 その2 "楽しみ"
(しかし、現実か……)
決して忘れた訳ではない
ジン自身のクリアへ邁進する理由だ
現実へ帰る――その為にクリアを目指す
だが、どうやらその先に待っているであろう現実での出来事は想定していなかったようだ
(そういや…アイツ等飯とか大丈夫だろうな…)
両親は共働きで帰らない事もある
故に家事の大半を彼が担っている訳だが――その彼がこのような状態になっている為、どうなっているか分からない
真衣、真魚、真由――三人の妹、しかも三つ子
人数はいるから何とか協力していると思うが、それでも不安なものは不安である
自分が死ぬ訳にはいかない、しかし早くにクリアしてしまいたい――
逸りそうになる自分を自覚しながら、それを抑える
そう、今は目の前に集中しなくては――只でさえ似たような人間がいる
彼女達も仲間だ、故に面倒見なくてはならない時はそうしよう
そう思ったジンは振り返ってついてきているかを確認する
目の前にクリスとリアナの二人――しかし、その様子が先程と違う
「ねぇ、リアナ」
「分かってる。何この感じ…」
彼女達にはお互いに通じ合う独特のものがあるようだが、何かおかしい
まるで殺気を感じ取っているような――
瞬間、彼も何かを感じた
圧力のようなもの――
「くっ……!」
危険を知らせている暇はない
二人の肩を掴んで無理矢理伏せさせた
直後、三人の頭上を通す巨大な物――影の感じから言って近くの大木
巨大なモンスターでもなければ普通出来る芸当ではない
だが、普通ではない人間なら――
顔を上げた先にいたのは白い服の少年
「ヤツは……!」
薄笑いを浮かべる少年――ダグバであった