第34章 第61層~第70層 その2 "楽しみ"
六十四層クリア――
そして立て続けに六十五、六十六層をクリアし、勢い付いているのは明らかであった
しかしその裏でPKの被害は増加
下手人が神出鬼没故、まともな対策を立てられずにいた
とは言うものの直接自分達に被害が来なければ意識しないのが人間の性
それも自分達が一定以上の独立性を持っていれば関係ないと思うのは常である
だが彼――ジンは今"面倒臭い"という被害に遭っていた
「お願いします‼」
目の前には手を合わせ、まさに頼んでいるクリス
彼女の双子の姉妹であるリアナは諦めたとばかりの態度である
一言で言うならクエストに付き合って欲しいというだけなのだが、ジン本人からしてみれば"自分でなくても良いだろう"という思いを巡らせていた
「何でわざわざ俺なんだ、リリィとか暇人だろ」
「いやぁ…エリーちゃんに先越されちゃって」
「ケンはどうした、アイツなら喜んで行きそうだろ」
「いやぁ…ちょっと五月蝿いのは…」
「後は…問題外か」
「いやぁ…あの人はちょっと…」
何と言うことか、とジンは頭を掻いた
逃げ道が次々と潰されていくではないか
「お前ら二人で十分じゃないのか?」
「実はコレ、三人でやるクエストなんだけど……」
最後に放った頼みの綱も全く効果を見せずジンは頭を抱えた
(最初に言えよ……)
逃げる為の理由付けも頭に浮かばず、諦めが彼に手招きをしていた