第33章 第61層~第70層 その1 "誇りと驕り"
一撃を受け、ツクモは後方へ吹き飛び、木に激突して止まった
「良い事教えてやる。テメェの言う誇りを持ってる奴はな、必死に生きてるぜ。カッコつけて斜に構えてるテメェは、単に上から見下してるだけだ」
ツクモの髪を掴んで顔を上げさせたトーマ
その口から放たれた言葉は、激突の衝撃から虚ろになったツクモに届いているかは微妙であるが
トーマ自身それは理解していた
だがそれでも彼にとっては最早どうでも良い
大事なのはここからである
「じゃあ…ちと早い気もするが、喰わせて貰うわ」
喰う――
彼にとってこれ程重要な事はあるだろうか
彼自身の体験から見出だした答え――食事、それこそが生きる全て
故に自身のあらゆる全てを以て対象に当たり、敬意を以て食す
今はゲーム故、実際の食事は行えない
せめて命を奪う事で、その代わりとしよう――それが彼の定めた彼自身のルール
だが――
「ちょ~っとストップ出来るかな」
トーマが力を込めようとした瞬間、声が割って入った
直後何かが上から来る気配――反射的にツクモを放し、後ろへ跳躍
「何だテメェ」
それまでトーマのいた位置には刃
剣――否、ただの剣ではない
笛の様な筒に刃を付けた、と認識した方が正しいような物
「食事の邪魔してんじゃねぇぞ」
「ゴメンゴメン。でも彼もいた方が面白いだろうからちょっと我慢してよ」
苛立ちを隠しもしないトーマを目の当たりにしながらも、この人物は気にしていない
「そうだ、君も招待してあげる。最高のイベントになるからさ」
言いながら何かを放った
キャッチした物はカード――それを認識した時既に割り込んだ人物もツクモも消えていた
逃した――その事実に苛立ち近くの木をトーマは蹴る
残ったのは招待状とも言うべきカード
(ゲリザギバスゲゲル……何だこりゃ?)
そこに記載された異様なタイトル
しかしその名に、トーマは確かに戦いの予感を得ていた