第31章 第51層~第60層 その3 "白い悪魔"
「ちょっとツラでも見てやるか」
「ちょ、ちょっと――」
まさに好奇心の赴くまま、ビルの中へ入った馬鹿を私も追った
エレベーターに乗り屋上へ――
沈黙が緊張感を高める
表示が屋上を示す「R」となり、私達を外へ導く
だがそこに人の姿はなかった
「いない…?」
「………」
軽く周囲を見回すもやはり姿はない
奇跡的なタイミングで入れ違ったとでもいうのか
「見つけた、いつの間にか降りてやがる」
トーマの見下ろす先――確かに先程見た姿が人混みの中にあった
「追うぞ」
言いながら再びエレベーターに乗るトーマ
同乗しながら、私はここで終われば良いのに――と叶いそうもない願いを抱いていた
地上に着いた後も見失わない程度に距離を保ち、追いかけていく
だが向こうは何を考えているのかあっちこっちで曲がっていく――気付かれているんじゃないか、そんな感覚すら覚える
向こうの歩くスピードも少しずつだが上がっている
追い付く事その物が難しさを増した時、私達は一つの入口に辿り着いた
地下へ続く道
第十六層の裏フィールドへ続く道だ――尤も、裏と言っても既に十二分に知られており、「迷宮区へ行かないフィールド」という意味で裏と呼ばれているに過ぎない
「誘ってるな」
「どう考えてもね」
ここまで来れば流石に誰でも分かる
あの白服の男は追跡に気付いている
さて、進むか止めるか――本格的に決めねばならない
戻れば真相は謎のまま、進めば無益な人との闘い――結末としてはどちらも微妙だ
その選択で迷う中――
「オイ、待て馬鹿」
私達はジンの声を耳にした