第31章 第51層~第60層 その3 "白い悪魔"
五十二層のクリア――
それは私達にとって良い影響をもたらした
聖槍十三騎士団を倒すという目的の為、他の意向を多少無視して攻略を進められる
とは言うものの、全員を改めて拠点に集める為、五十三層を放置
その代わり五十四層のボスを私達だけでクリアしてきた
まだ私達だけでのボス戦になれていない部分があるが、それでも共に暮らす事で息を少しずつ合わせるといった部分も現れていた
五十五層――
私達は特に攻略を進める事なく、まさに気ままといった具合であった
今日も適当なクエストを消化する為にフィールドに繰り出していた
とは言え全員ではない――全員来る訳がない
分かっていた事態だ
故に今は私一人、ただの一人でフィールドにいる
クエストも採集である故、確かに人数はいらないのだが……如何せん危険の二文字が付いて回る
モンスターによる予期せぬ襲撃もそうだが、それ以上に恐ろしいのはプレイヤーによる襲撃だ
最近、PK行為が再び増えている
昼夜問わず、その被害情報を耳にする事が多い
故に少人数の場合は周囲への注意を忘れてはならない
無論今の私も、それを忘れた訳ではなかった
鬱蒼とした森の中、私が探すのは木材
若干レア度の高い綺麗な木材だ――そこら中にある訳ではないが、虱潰しに探せば何とかなる
(次のポイントは――)
地図を開いて現在地の確認
直後、私の手が止まる
気配がする、敵意だ
特に後ろを警戒しながらゆっくり地図を消す
直後――
「見つけた!」
――木陰から一人飛び出して来た
片手槌を手にした仮面の人物――体躯から言って同年代の少女だろう
その少女は真っ直ぐに私の方へ向かっている
既に振りかぶっているが、止める自信はある
降り下ろされた片手槌に鞘をぶつけて鍔迫り合いへと持ち込む
「ちょっといきなり何なの!」
突然の襲撃に声が荒くなる
回答の代わりか、相手の仮面が頭の方へスライドし、バイザーのようになった
そして見えた瞳には、憤怒と悲しみが宿っていた
「白い奴……姉さんの仇ィ‼」
「はぁ?」
だが私はその憤怒も彼女の言にも心当たりはなかった