第30章 第51層~第60層 その2 "躍進"
「あ?」
トーマは空中で放たれた矢を見る
自身がいるにも関わらず矢は向かってくる
直後にボスの靴を蹴り、リングへ戻った
そのまま矢はボスへ降り注いだ
「オイオイ、俺がいたろうが」
「囮じゃ嫌?」
「ハッ、そうかよ」
私の意図を理解したトーマは再び跳躍する
多くの矢に怯んだボスの顔面に拳を叩き込む
今度は素直に入った――ボスが大きく体勢を崩す
一気に攻めるなら今――そう感じた瞬間、場に影がかかった
ただの影――ならば良かったろう
だがこれは影というには余りにも暗い
まるで夜になったようだ
直後、ボスの手足が下へ落ちた
(何――?)
ピエロの様な体が平たくなり、再び膨らんだ
ただそれは元に戻るのではない――変色し、それまでとは全く違う形になった
刺々しい亀――そのような表現の似合う姿であった
姿が変わった――動きはどう変わる?
ボスは身体を大きく回転させる
ただの回転ではなかったのは明白――前足が離れた
鋭い前足が鎌のように飛んでくる
「抑えるぞ」
鎌の正面にジンが立つ
ブーストのかかった両手剣と鎌と化した前足がぶつかり合う
拮抗する力――そこにケンタが駆け込む
「どおぉぉるぁぁ‼」
同じようにブーストをかけた両手斧が鎌に当たり弾かれた