第27章 第41層~第50層 その4 "転換点"
「……ぇ…」
ボスは再び距離を取った
だが、一瞬の出来事に頭がついていかなかった
故に僅かに止まった私の身体に異常が発生した
右足から落ちる感覚――まさにガクンという表現が似合う感覚が激痛と共に現れた
目線を落とした先――カッターが私の足首から先を斬り落としていた
「――!」
崩れた体勢を両腕と左足の三本で無理矢理支える
このままユウの救助に向かわなくてはならない
だが、血に群がる獣のような取り巻きが私に向かってくる故、思うような動きが出来ない
「こ、のォ!!」
ミヤが杭そのものに向かって攻撃をする
だが杭は全く微動だにしない所か、逆にミヤの短剣を砕いてしまった
「ぐ……なら!!」
武器を失ったミヤ
ならばとユウを貫いている杭を直接持つ
引き抜くように力を込めるミヤ
だが、杭は動く気配を見せない
「取れ、てよ……取れてよ取れてよ取れてよ!!」
込める力も空しく杭は動かない
「……ぁ…はる、か…」
漸く意識を取り戻したユウが力無く手を伸ばす
「ちょっと…待っててよ! 絶対…助けるから!」
伸ばされた手を伸ばし再びミヤは掴む
確かに掴んだ手、確かな力が込められた
「全く……カッコ悪い所…見せちゃったな……」
呟きのような言葉の直後、突然ユウの身体が砕け散った
(え――?)
砕、け――散っ、た――?
自分の認識が分からない
砕け散ったのは身体の一部ではない、全部だ
つまりそれはHPが無くなったという事で、HPが無くなったという事は――
「嘘だろ……オイ…」
ケンタの言葉が不思議に響く
跡形も無く砕け散った
その意味を、何処か理解しながら認められない――理解出来ないという気持ちを、私は抱かざるを得なかった