第26章 第41層~第50層 その3 "転換点への道標"
数日後――トーマは再びバスクの元を訪れていた
バスクの作った炒飯を漁るように食しており、米粒が周りに飛ぼうがお構い無しであった
「そういやこの前なんだけどよ、中々面白ぇ奴がいたわ」
唐突な会話
珍しいが故にバスクは特別な事でもあったのだろうと感じた
「ほう、それはアレか? お前の最後の獲物とやらになっちまったお嬢ちゃんの事か?」
「いや、違う奴だ。だけどなそいつのお陰でイライラがスッキリしたし、何が楽しいのかを改めて思い出させてくれたぜ。まぁメインディッシュにはならねぇが、歯応えのある奴だったな」
「珍しい奴もいたもんだな。で、どんな奴なんだ?」
「あ? ああ……刀使ってた。あとどっかの騎士かよ、って格好で……誇りがどうの恥がどうのとか言ってやがったな」
ここまで聞いた時点で、バスクにはある人物が浮かび上がっていた
しかし、そうだと断定は出来ない
そうとは知らずトーマは話を続けた
「それと、設定し直したのか水色の髪してやがったな」
それでバスクの頭の中はかなり整理された
そして、彼にとって嫌な情報が頭に浮かんだのである
「……もしかしたらそいつ、ヤバい奴かもしれんぞ」
「どういう事だ?」
「何でも"誇り無し"と判断した奴を刀で斬り殺す奴だ。名前は確か……ツクモ」
言いながら、バスクはこれで正しかったと感じていた
「へぇ、人殺しねぇ――」
しかしトーマの瞳はむしろ爛々と輝き始める
いずれ来るであろう、"命のやり取り"を期待するように
「――面白い奴じゃん」
彼は言葉を紡いだ