第21章 第31層~第40層 その3 "喧嘩花火"
僅かな経験値、そして目的の物を得た事を確認したジンはその場を後にしようとした
しかし彼の前に、一人のプレイヤーが立ちはだかるように現れた
軍服のような黒い服装から見える肌は異常なまでに白く、髪すら白い
サングラスに隠れた瞳のお陰か、表情の全てを読み取る事は出来ない
だが、表情など読み取らなくてもジンには目の前の人物が有する獰猛な雰囲気を感じ取る事が出来ていた
「……何の用だ?」
ややあって、口を開くのはジン
このまま壁の如くいられても困るだけと判断し、さっさと済まそうとしていた
「いや…先に狩られちまったな、と思ってよ」
声は静かに発される
雰囲気通りの獰猛な声
「だったら残念だったな。次に奴が出てくるまで待っていろ」
自分は目の前の男よりも僅かに早く目的の敵を倒した
この世界、ボスとプレイヤー以外は基本的に何度でも現れる
だからその場の競争に負けた場合は、時間をかける他無い
ジンはその事を告げて去ろうとした所、彼を止めるように男が口を開いた
「いや何だ、今の奴には執着って程執着はしてねぇさ」
だとしたら何だと言うのか
怪訝に感じたジンに構わず男は続けた
「ただまぁ、ここまで来ると馬鹿に出来ねぇって思う訳だ。なぁお前よ、呪いみてぇな運命ってどう思うよ?」
話が読めない―
ジンはそう感じたが、答えなければこの場は収まらないとも感じていた
「呪いにしろ運命にしろ、そいつ自身がそう思えば呪いにも何にでもなる」
「ハッ―そうかい」
ジンの答えをどう感じたのか
曖昧な反応の男は、そのまま夜闇に消えていった