第21章 第31層~第40層 その3 "喧嘩花火"
聖槍十三騎士団は瞬く間に三十三、三十四層をクリア
その勢いのまま三十五層も突破してしまった
この事実に多くのプレイヤーがクリアへの希望を見出だし始めていた
だが、"我関せず"というプレイヤーも存在する
彼―ジンもその内の一人だった
闇夜のフィールドを駆ける彼の手には身の丈程の剣
本来は両手で扱う筈のそれを片手で軽々扱う彼は強大な戦力として一目置かれている
しかし同時に彼は"一人勝手に進む奴"としも見られていた
彼自身、他のプレイヤーと一時的に協力する事はあれど常時誰かと組みはしなかったし、組みたいとも思わなかった
故に彼は今も一人だった
彼はその時、敵を追っていた
そこからドロップする素材にて、今使っている武器を更に強化しようという目的であった
しかし、目的の敵は夜しか現れないという性質を持っている
故に彼はこの世界で昼夜逆転の生活をしていた
だが、彼の動きに淀みはない
剛胆且つ精密―確実な動きで目的の敵を追い詰めていく
だが、彼が敵を追い詰めていられる要因はそれだけではなかった
今相手をしている敵は巨大な狼であったが、木陰から姿を見せる度に、その身体が穿たれたかのような穴を見付ける
(他の奴にも狙われている、か…)
しかし彼にはそんな事実など関係ない
他のプレイヤーも狙っているのなら、そのプレイヤーよりも速く倒せば良いだけだ
その理屈を元に彼は一気に攻め込む勢いを見せた
動く木陰に向かって駆ける
そのスピードはそれまでよりも速い
(このまま追い付いて叩き斬る―!)
そう考え、いつでも剣を振れる体勢のジン
しかし予想外にも目標は向こうから現れた
逃げるような、すがるような狂暴性を見せながら真っ直ぐに向かってくる
これは彼にとっては少々予想外であったが、彼は慌てなかった
向かってくるならむしろ手間が省ける
それくらいに考えた彼は横に一閃を放った
それは目的の敵を真っ二つにし、四散させた