第16章 第21層~第30層 その3 "Alien"
ユリの身体にもう一度力が込もる
一気にこちらへ距離を詰める気だ
その考えの通り、彼女は駆け出す
だが、その直後飛来した薙刀が私達とユリの間に割って入った事でそれは止められた
「調子はどうだい、ユリ?」
現れたのは洞窟を崩落させたあの女
ここに来て加勢か?
今の彼女も敵である故、油断はならない
そうして構えた私達を無視するように彼女は薙刀を地面から抜き、ユリの方を向いた
「ズラかるよ。今はもう充分さね」
「…っ!でもジュリ―」
「あぁうっさいうっさい。少しは成長を楽しむってのも覚えな」
そう言って薙刀持ちの女―ジュリはユリの首根っこを掴んで引っ張っていく
「あぁそうだ―」
だが、その途中でジュリは止まり、こちらを見た
「さっきのアイツに言っといてくれ。もっと強くなって、もっと殺し合いを楽しもうってな」
アイツ―多分私達の中の誰かだろう
そんなメッセージを残して、二人は洞窟の闇の中へ消えた
どうやら罠ではないらしい
少し様子を見たが、何もないので私達はすぐに警戒を解いた
(また…人殺し、か…)
この嫌な、しかも因縁となってしまった今回の出会いを思い返しながら、私は嘆息した
私達はこの後合流し、何とか洞窟から脱出したものの、後にもう一度会うかもしれないと思うと、素直に脱出を喜べなかった