第16章 第21層~第30層 その3 "Alien"
ジュリ本人に決定打は入っていない
しかし、キョウヤ達の目的―ジュリをケンタから引き離す事は達成された
これが達成されたという事は、彼等は同時にジュリをある程度追い詰めた事になる
この事態にジュリはもう一度舌打ちをした
良いところを邪魔された上に自分が追い詰められている
彼女の目の前にはキョウヤ、シンジの二名
更にもう少し奥―ケンタの方へ視線を動かすと、盾を持った男―ユウが彼を守るように立っている
付け加えるなら、ジュリは自分の後ろから矢の射手が狙いを付けているのも察知していた
つまり、前後を四人に囲まれている
(こりゃ素直にトンズラだね)
そう決めたジュリは自らの後方に意識を広げた
後ろなら一人―逃げることに集中すれば、落ち延びは出来るだろう
「こうなっちゃしょうがないねぇ。ユリの様子も見に行くかな」
そう言ってジュリは後ろへ跳躍した
それまでよりも大きく弧を描いて跳躍する
矢の連撃が直後から襲い掛かるが、それらを薙刀で弾く
そして着地直後、もう一度跳躍
そのまま走り出し、ジュリは洞窟の闇の中へ消えた
残されたキョウヤ達は暫く構えを解かなかったが、彼女が完全に逃走したようで漸くそれを解いた
「ケンタ!!」
警戒を解いた彼等は一番の重傷者の看護に向かう
既にユウが無理矢理回復薬を飲ませたが、それでもケンタの負ったダメージは大きい
だが、生きていた―それが最もキョウヤ達を安堵させた
「先、輩…すんません…」
ダメージをありありと想起させる静かな口調
しかし、それが謝罪であった事に彼等は呆気に取られてしまった
「オレ…負けました」
「何言ってんだ。生きてりゃ良い、生きてりゃ勝ちだ!」
キョウヤのこの言、間違っていない
だが、今のケンタの心象は敗北感の方が勝っていた
(クソッ…クソッ、クソックソッ)
成す術無く敗れた自分への苛立ち
それが彼の中に膨れ上がり―
「クソォぉぉぉぉぉ!!」
―次は負けぬという決意と共に、放たれた