第16章 第21層~第30層 その3 "Alien"
右手に激痛が走る
だから今も刃を止められているのは意地としか言い様がなかった
(届いた―)
そう、届いた
ユリが振り上げた短剣がミヤの額を貫く前に、私はその場に辿り着いた
結果、右手を犠牲にしたが上々の出来だろう
「嘘―」
「ぬうぅあっ!」
想像した状況と違ったのか、私が間に合ったのに驚いたのか、ともかくユリの動きが止まった
そして、その瞬間を見逃す私ではない
踏み込んでユリに体当たり―ミヤから引き剥がした
「ミヤ、大丈夫?」
ミヤの手に刺さった短剣を引き抜きながら尋ねる
「ごめんリィちゃん…ありがと…」
数度の咳の後、ミヤは左手を支えに立ち上がった
ユリは軽く跳躍し、私達と距離を取る
彼女の手には短剣が一本
ミヤも使える左手に短剣を握る
そして私の手にも短剣―今の具合でいつもの剣を取りに行くことは出来ないだろう
ここに短剣を構えるプレイヤーが都合三人揃った事になる
「こんな…こんな筈じゃなかった……あの時…殺しておけば!!」
またも膨れ上がった狂気
その勢いのままにこちらへ向かう
こちらは二人だが共に手負い
油断は出来ない、が切り抜ける他無い
「じゃあちょっと頑張っちゃおうか、リィちゃん」
「うん、行こう」
そうして私達も駆け出した
先にユリと対峙したのは私―逆手に持った短剣で正面から斬りかかる
ユリも正面から短剣を振りかざした
どちらも本来の使用者は同じなのに―今は敵として、刃をぶつけ合っている
そのまま下から切り上げるのを、ユリは上からの斬撃で押し止めた
予想以上の狂気の念が僅かに私へ押し込んでくる
「てぇぇぇやっ!!」
だが、私は一人じゃない
ミヤが私を越えるように跳躍―ユリとの間を裂くように、蹴りを落とす
ユリはこの蹴りを避けようと後ろに跳躍して距離を取ったが、その瞬間こそが狙い目
私は後ろに跳躍したユリを逃さぬよう突っ込む
直後、ミヤも私の横に並ぶように加速
先とは一転、私達がユリを押し込む展開となった