第15章 第21層~第30層 その2 "Twin"
困惑続く私の前で店員も何か悩んでいるようだった
何か悪い事態でも起きているのだろうか
そんな疑問を尻目に―
「後悔しない?」
―私に問いを投げ掛けた
何を言っているのだろうか
こちらはそういう目的で来ている
そういう意を込めて、私は頷いた
それで向こうは観念したのか、奥へ通じる扉を開いた
こちらから僅かに見える奥の景色はこことは違う作業場
きらびやかという印象はない
「クリス、客!…だから客だって!アンタの!」
そう奥へ呼び掛ける店員
クリス―それがここで鍛冶を請け負っている人物の名前なのだろう
ゲーム中とは言え鍛冶―本来の職人技を取り扱っているのだ
偏屈、というのは偏見だとしても一筋縄ではいかないかもしれない
そう考えていた私の前に現れたのは、最初に応対した人物であった
いや、この言い方は正確ではない―目の前の状況を正確に表すなら、最初に応対した店員と全く同一の姿をした人物が現れたのである
全くの瓜二つ―しいて違いを挙げるなら、先程まで作業をしていたと見られる汚れがあるかないか程度である
そこがなかったら全く分からない
状況が読めず混乱している私を見て、奥から出て来た人物―クリスが顔を輝かせる
「ねぇねぇリアナ、お客さんだよ!」
「だからアンタの客だって言ったでしょ」
「やったねリアナ!久しぶりのお客さんだよ!!」
「それは誰のせい…って、ああもう鬱陶しい!!」
喜びの余り抱き付くクリス
それにツッコミを入れるリアナと呼ばれていた最初の店員による漫才…のような何か
全く同じ姿の二人が行うものだから、シュールさはひとしおだ―尤も、何となくタネは見えてきたが
現状は分かりつつあるものの、割り込む隙間を見つけられない私の袖をエリーが引っ張った
何かと思って振り向いた先、私の目に入ったエリーは若干虚ろな目をしていた
「二人共…大きい…トランジスタグラマー…」
ポツポツとしか言葉は出ていなかったが、意図する所はあっさりと理解出来た
というか―
「そこしか見てないんかい」
こちらもツッコミせざるを得なかった