第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
誰よりも、という事はボスよりも早く、速い
誰一人―ボスさえ対応出来ぬ間に、私はボスへ肉薄
(取った―)
確実性を帯びて振り下ろした一撃
絶対的な間を突き、必中必殺の一撃
だがそれは、ボスに届きはしなかった
届く前にベクトルを抑えられた感覚
何かに剣を、勢いを止められている
同時にボスの頭―その少し先に光が集まっていく
マズいと感じる前に身体が動いていた
足を無理矢理捻り、ボスの頭と直線になる位置から離れる
直後、圧力―
先程までいた位置を光が通っていた
しかもただの光ではない
まるで大砲か何かの類いであるかのように、音を立て、風を生じさせた
先の位置にいれば胸に穴が空いていただろう
尤も、ギリギリ回避をした今の位置もまた安全とは言えなかった
光が放たれた際の衝撃
風圧により、私の身体が宙を舞う
体勢を崩し、転がりながら着地したものの、滑る身体を止める術は地面に剣を立てるしかなった
幾分か後ろに滑り、漸く止まるかと思った時、今度は身体が落ちた
「―っ!」
空いた左手で目の前になった地面を掴む
僅かに視線を向けると、身体がまた空中に―しかし今度は皆よりも低い位置にあった
落ちる―そう感じた私は地面を掴む左手に力を込める
「リィちゃん!!」
ミヤが私を引き上げようとこちらへ向かうのが、タイミングが悪かった
ボスの頭がもう一度光を放とうとしているのが見えてしまった
「ミヤ来ないで!!」
私を向いた一撃、という事はミヤにも直撃してしまう
思わず出た叫びに、ユウが素早く反応し、ミヤを射線から掻っ拐うかの如く、抱き抱えて回避させた
直後、またも光が走った