第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
「シンジ!!」
あの触手は危険だ
ボスが反転した際に地面に落とされたシンジ先輩に向かって部長が叫ぶ
あの触手は危険だ―それを目の前で見せられたからこそ、叫ばずにはいられなかった
触手の全てがシンジ先輩に向かった訳ではない
しかし一本でも駄目だ―部長の叫びとほぼ同時に横に転がって向かってきた触手を回避
他の五本はそれぞれの相手へ向かっていき、それの回避の為、各々動かざるを得ない
故に、私達はシンジ先輩の元に行く事が出来ない
鞭のように靡き、うねり、迫る―起き上がるのも儘ならないが、それでも寸での所でかわし続ける
「クソッ!!」
偶然、触手から距離のあったユウがシンジ先輩の元へ走る
走りながら盾を外し、シンジ先輩に迫る触手に向かってそれを投げた
それは空中で触手に命中し、触手の動きを止める
すかさずユウはシンジ先輩に手を伸ばし、シンジ先輩を立たせる
「助かった」
「それ程でも。まぁ、次は無理みたいですけどね」
二人が視線を向けた先―ユウの投げた盾に触れた触手が先程と同じように胎動し、盾を砕け散らせていた
幸い、他の五本も武器や防具を犠牲にするだけで済んでいた
尤も、それをやられた方としては攻撃、または防御の手段を無くした事になる故、結果として危険度は上昇しているのだが…
それでも生きているだけ僥倖だ
逃げ回れば、もしかしたら生き残れるかもしれないから
だからこそ私達のような、まだ戦える人々が何とかしなくてはならない
今一度地上に降りたボスと対峙することとなった