第12章 第11層~第20層 その4 "Search"
ボスは空中で震えながら後退していく
代わりにカウンターとばかりに私に残り一本となった触手が迫る
だが―問題無い筈だ
私の頭上を越える気配―ミヤとシンジ先輩だ
視線を向けた時、既に二人は触手に迫り―
「「はあぁぁぁぁ!!」」
―ブーストをかけた刺突と斬撃を撃ち込む
怯む触手
揺らぐそれの下にユウとケンタ
「ケン、やるよ!」
「おうよ!!」
短い問答の後、二人もまたブーストをかけ―
「達磨落としだあぁぁぁ!!」
―左右から触手に互いの一撃を撃ち込み、触手を斬り裂いた
地面に落ち、砕け散る最後の触手
ボスは相変わらず浮いている―やはり壁から離れた時から連動はしていないようだ
だが、今や関係無い
改めて、ボスへ駆け出す
ボスの空中浮遊は上へ下へ右へ左へ―軌道は不規則さを見せている
だからどうした
奴は遅い―私が速い
だから勝てる―奴の先に届く
脇に現れるガーディアンを無視して高速で駆け抜け、跳躍
その先はただ一点、ボスのみ
掲げた剣はブーストをかけた突きの型
「せえぇぇぇぇぇぇ!!」
放つ突き
同時にボスの殻が閉まり始める
だが、言い放つのはたった一つの理
「遅い!!」
私が速い―たったそれだけ
故に私の剣は、閉まりかけた殻の隙間―ほんの隙間へ刺さり、ボスが砕け散った
空間が元の迷宮区の意匠に戻る
(終わった…やっと…)
荒い息を整えながら、剣を鞘に戻し、"引き出し"を閉じる
血の熱さは冷めたものの、抱いた願い―その形を見るように、自らの手を見る
アルビノ故白く、女故に力強さよりも細さが目立つ、昔は異物と払われ忌まれ嫌われた私の手
それは何処まで届くのだろう
私は何処まで出来るのだろう
全てはここから―
ここからそれの答えと証明をしなくてはならない
見出した力の形を心と身体に刻みながら、十七層はクリアされたのである