第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
何という事だろうか
私はPKを行うプレイヤーとPKを行っている疑惑のあるプレイヤー、二人の危険人物に同時に出会ったのだ
だがトンファー男が現れたのに驚いたせいか、ウェンドロの手が緩む
すかさず私は、両腕と右足を用いて二人から離れる
「それにしてもお前よ、よくこんなつまんねぇ奴とつまんねぇ事してんな。俺は無理だわ」
全く理解出来ないというようなトンファー男の口調では聞いている余裕はないし、聞くつもりもない
「チッ…化物ぉ…!」
苦虫を潰したかのようなウェンドロ
彼は剣に力をかけているようだが、トンファー男は全く揺らいでいない
「オイオイオイオイ、勝手な事言ってくれんじゃないの。仮に俺がお前の言う通り化物だとしたらだ、そこの白い奴の方が化物だぜ。本物のな!」
そうだろ?と言いたげに僅かにこちらを見るトンファー男
「こっち見ないで不快なんだけど」
絞り出すように、しかしハッキリと言う
何故か彼に対してはハッキリ言ってやらないと気がすまない
しかし当のトンファー男は我関せずとばかりに、今度はウェンドロへ顔を向ける
「でだ、お前は何してんだ?アレは、俺の、獲物だぜ。勝手にしっぽりしてんじゃねぇよ」
さも、理解の足りない子供に聞かせるように言うトンファー男
「だから勝手に言わないで。アンタの獲物じゃないし、しっぽりなんて気色悪い」
脇から私が口を挟むが、どうやら向こうは違う空間なのか私に対する反応はなかった
「いいさ、ならお前から殺してやる!!」
そう言ってウェンドロは距離を取る―臨戦態勢だ
一方トンファー男は、やる気無さげに立っているだけであった