第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
「横槍か?いいぜいいぜ、今は乗ってやる。あの連中よりお前らの方が今は楽しませてくれそうだしな、なぁそうだろ!!」
そう言ってトンファー男は笑い出す
その場の全員に聞こえて、極めて不快な笑い
唯一、先程殴られた個体のみが立ち上がり、入口として使った天井へ跳躍し、何処かへ消えた
「逃げんなよ逃げんなよ、もう逃げられてんだから逃げんなよ!ハハハハハ!!」
笑ったままのトンファー男は、逃げた個体を追って、天井へ跳躍―彼もまた、何処かへ消えた
これで安心とはいかないが、現状で一番の問題要素は消えた
残りは、二体のアスタークと少年
剣を抜いて、構える
「君は後ろに下がるか、逃げるかしてくれ」
そう言って部長は少年を離し、槍を構える
少年はとりあえず大丈夫なようで、私達の後方へと走っていった
「皆、相手は二体だけど今は退けない。何とかして両方倒す。それじゃあ…スタート!」
部長の合図で駆け出すのは私―次いでシンジ先輩とミヤが走る
敵は二体共、こちらへ突進を開始―互いが互いへ向かうという状況が作られる
先に手を出したのは―向こう
爪とも拳ともつかない腕が、パンチの如く突き出される
私はそれを跳躍して回避―二体の間に入るように着地
振り向く勢いを用いて腕を斬り、怯ませる
直後、シンジ先輩とミヤが左右に別れ、跳躍
それぞれ顔に斬撃と刺突―シンジ先輩はそのまま敵の後ろへ、ミヤは蹴りと共に短剣を抜き、敵の目の前へ着地していく